【防災士が厳選】防災リュックの中身を紹介します!

防災情報

近年、豪雨や台風による被害は甚大化し、南海トラフ地震や首都直下地震はいつ発生してもおかしくない状況と言われていますが、みなさんは災害に備えて非常持ち出し袋防災リュックを用意していますか?

大きな災害が発生して避難所に向かう必要があるとき、その時になって準備するのではなかなか必要なものが揃えられません。何より速やかに身の安全を確保したいですよね。いざというときに慌てないように、平時から防災リュックを準備しておくことが重要となります。まだ準備していないという人は、ぜひ今から防災リュックの準備を始めましょう。

しかし「わかってはいるけど防災リュックの中身に何を選んだらよいかわからない」という人も多いかと思います。

そんな人のために、防災士の資格を持つ私が防災リュック作成の考え方から防災リュックの中身の例を紹介しますので、みなさんの防災リュックづくりの参考にしてみてください。

この記事でわかること
  • 防災士が防災リュックの中身を解説します。
  • 防災リュックの中身を選ぶときの考え方がわかります。

防災リュックの中身の考え方

まず防災リュックの中身を選ぶ際の考え方や、考慮すべき想定を確認しておきましょう。

「2次の備え」や配給までの繋ぎ

災害の備えとして、次のような考え方があります。

今回紹介する防災リュックの中身は「1次の備え」で、災害発生後、自宅から避難所に持ち出すものです。

安全が確保されたのちに自宅に戻る場合には、2次の備えを活用することになります。避難が長期化する場合には、配給が受けられたり2次の備えを持ち出したりすることになりますが、それまでの繋ぎの備えです。

避難所の生活をイメージする

避難所での生活はどんなものでしょうか。

それを想像していただくために、2011年3月11日に発生した東日本大震災で開設された避難所の様子を見てみましょう(福島県南相馬市のホームページより)。

写真で見る東日本大震災(市内の避難所の様子)/南相馬市公式ウェブサイト -Minamisoma City-

避難所となるのは、学校の体育館や集会所といった大人数が集まれるような場所です。広い場所に老若男女がひしめき合っていますね。画像にもあるように、着の身着のまま避難された方がほとんどだということです。

このような状況で1日以上を過ごすことになります。そして地震や大雨等の災害時ということを考慮すると、次のようなことが考えられます。

災害の影響で起きること
  • 断水・・・トイレ、手洗い、風呂、歯磨き、洗濯ができない。飲料水がない。
  • 停電・・・照明、冷暖房、テレビが使えない。携帯電話の充電ができない。
  • ガスの停止・・・調理や給湯ができない。
  • 交通網の寸断・・・支援物資が届かない。
  • けが
避難所での生活で困ること
  • プライバシーがない
  • 情報がない
  • トイレが不衛生
  • 音、声、照明(特に睡眠時)
  • 感染症(新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルスなど)
  • 劣悪な睡眠環境
  • ストレス
自宅から避難所、避難所から自宅への移動
  • ガラスや障害物
  • 夜間
  • 津波から素早く逃げる

なかなか過酷な条件ですよね。防災リュックの中身には、なるべくこれらを緩和するものを選びたいところです。

防災リュックの基本セット

以上を踏まえたうえで、防災リュックの中身に入れるものを選定してみましょう。

今回私が紹介する中身は、防災リュックの基本セットだと思ってください。このセットから、自分にとって必要なものを足したり、不必要なものを引いたりして、自分なりの防災リュックに仕上げてくださいね。

水、食料

人間が生命活動を維持するために必要なものは、食料です。特に避難所生活において水は、脱水症やエコノミークラス症候群、心筋梗塞などを防ぐためにも重要です。

水の量については、農林水産省によると「飲料用と調理用(※)だけで一人当たり1日3リットルの水が必要」とのことですが、それほどの量を持ち出すのは大変です。最低でも500mlペットボトルを2本程度は入れておき、体力的に持ち運べる余裕があるなら追加してみましょう。

災害時はショックや不安で食欲がなくなりがちではありますが、体調を考えると少しでも食べておきたいところです。そのため、自分が食べやすいと思うものを用意するのがベストです。推奨するのは、水(お湯)を使わずに調理できてカロリーの高いものです。

ちなみに私は、パンと羊かんとクラッカーを選びました。パンと羊かんは甘いので、塩気のあるクラッカーを追加しました。甘いものを食べたら、辛いものが食べたくなりません?

水や食料は普通のものでもいいですが、手入れの頻度を考えると長期保存ができるものがいいですね。

トイレ

断水が発生するとトイレが使えなくなりますが、トイレを我慢することは不可能です。トイレに行かないようにしたいがために水分を制限するのは、脱水症やエコノミークラス症候群などを誘発するのでやってはいけません。

そんなときに必要となるのが携帯トイレです。最低でも1日5回分以上をカバーできる個数を用意しておきたいです。

トイレットペーパー防臭袋も忘れずに。トイレットペーパーはティッシュペーパーの代わりにもなりますので、1巻入れておいても邪魔にはなりません。

私は1個で小3回、そして大にも対応している携帯トイレを入れています。

情報の確保

スマホ(携帯電話)は情報収集や安否確認などになくてはならないツールですが、充電に不安があります。停電していなくても、コンセントが渋滞して充電できないという事態が起こりえます。

そこで、通常の充電器に加え、モバイルバッテリー電池式充電器は持っておきたいところです。

モバイルバッテリーは常にフル充電されていることが望ましいですが、その状態を維持するのも大変だと思うので、電池式充電器が確実です(電池の劣化には注意です)。

また、スマホの充電を温存するために、情報収集はラジオで行うのがお勧めです。防災用のラジオは手回しで充電することができ、ライトがついていたりスマホを充電することができるものがあります。

衛生用品

感染症の予防やけがの治療、体の保清も対策しておきましょう。

感染症予防

大人数が集まる避難所では感染症が心配です。ただでさえ災害で大きなストレスを受けて免疫力が低下して感染症にかかりやすくなっているので、しっかりケアしておきたいです。

救急セット

すでに防災リュックを用意しているという人で、絆創膏は入れているという人は多いと思います。しかし、大きな災害が発生し負傷するという状況を考えたとき、果たして絆創膏だけで足りるでしょうか。

災害で負傷者が多数いる場合は「トリアージ」が行われ、緊急度の高い人や重傷の人から治療が行われます。命にかかかわらない程度のけがは、自分で対応するしかありません

けがの程度は予測できませんので、絆創膏にプラスして消毒液やガーゼなども用意しておくと安心です。

私は個々で揃えましたが、ひとまとめになっているものもあります。

保清

水が使えない状況で清潔を保つことは難しいです。

例えば数日お風呂に入らなくてもたちまち何かが起きるわけではないので、優先度は低いと思われがちですが、避難所では周りへの配慮も必要です。ストレスも軽減したいですよね。

口腔ケアは怠ると肺炎を誘発しますので、対策しましょう。歯磨きシートや液体歯磨きならば、水を使わずにケアできるのでおすすめです。

他にもこんなものを用意しよう

睡眠対策

避難所の睡眠環境は劣悪です。ストレスに加えて硬くて冷たい床、周囲の音や光など、なかなか眠れないと思います。しかし、少しでも休息して体力を維持しておきたいところです。

アイマスクと耳栓はかさばるものではありませんので、入れておいて損はないです。余裕があればエアーマットやエアー枕を入れてもいいと思います。

エアーマットなど空気を入れて利用するものは、初期不良などにより空気が抜けるといったアクシデントが起こり得るので、私はアルミレジャーシートを採用しました。床の硬さは仕方ないものとして、冷たさを緩和します。

サバイバルシート(アルミブランケット)は、羽織ることで防寒や防風になるので入れておきます。

移動対策

リュックサックを採用するのは、安全のために両手をあけておきたいからです。夜間に移動するときは懐中電灯でもいいですが、ヘッドライトなら手があくのでおすすめです。

雨が降っているときに備えて、雨具やタオルを用意しておきます。また、がれきなどを撤去しなければならないときに、素手では危険なので軍手などの手袋(できれば耐切創)は用意しておきたいです。

私は靴下の替えを入れています。雨でぬれた場合は裸足で過ごすことになりますし、冬は防寒対策にもなります。

現金

公衆電話は、災害等の緊急時において電話が混み合い、通信規制が実施される場合であっても、通信規制の対象外として優先的に取り扱われます。スマホが使えなくても、10円玉があれば輻輳を回避できます。

また、停電時はキャッシュレス決済ができなくなることもあるので、ある程度の現金(小銭や千円札など細かいもの)を持っておくことをおすすめします。

身分証などの写し

大きな災害のときは、保険証がなくても医療が受けられたり、通帳や印鑑がなくてもお金を引き出せたりするなどの措置がとられることがあります。

そのため、身分証(保険証やマイナンバーカード)通帳保険証書などの写しを入れておくと安心です。

季節に応じて用意するもの

暑さ対策グッズ寒さ対策グッズは、リュックの容量や重さに関わるので季節に応じて入れ替えます。または「夏袋」と「冬袋」を用意して、防災リュックのそばに置いておくのがおススメです。

それぞれのグッズの例は、下記のとおりです。

暑さ対策グッズの例
  • 扇子、うちわ
  • 冷感シート(「冷えピタ」など)
  • 冷感汗拭き
  • 冷感インナー
  • 瞬間冷却パック(叩くと冷たくなる保冷剤)
寒さ対策グッズの例
  • カイロ
  • 防寒着(帽子、靴下など)

個々の状況によって準備するもの

これまでに紹介した防災リュックの中身に加え、個々の状況などを考慮したものを入れておく必要があります。

たとえば、

  • 女性・・・生理用品、サニタリーショーツ、防犯ブザーなど
  • 高齢者・・・折り畳み杖、介護食、おむつ、入れ歯洗浄シートなど
  • 持病がある・・・薬、お薬手帳(の写し)など

といったように、自分にとって何が必要になるか、何がないと困るかをよく考えて中身を準備しましょう。

これだけ揃えるのは大変?

以上が防災リュックの中身の一例です。意外と多くて、揃えるのが大変そうですよね。

これから防災リュックを準備するという人は、少しずつ揃えてみてください。いっぺんに揃えようと思うとそれなりにお金はかかりますし、必要なものを自分なりに厳選することによっていざというときに本当にあなたを守ってくれるからです。

「いや、もう手っ取り早く用意したい!」

という人には、下記のように防災グッズの中身がひとまとめになっている商品があります。

商品ごとに中身は異なるので、検索してみて「これだ!」というものを探してみてください。ただし、このような出来合いの商品を購入する場合でも中身は必ず確認し、何が入っているのか把握したり必要なものを追加したりしておくことが重要です。

まとめ:普段からの備えが大事

防災リュックは、災害時に迅速かつ安全に避難できるように準備しておく重要なアイテムです。災害はいつ発生するかわからないため、緊急時に必要な物資をすぐに持ち出せる状態にしておくことが命を守る第一歩となります。

非常食や飲料水、衛生用品、救急セット、貴重品など、自分や家族に必要なものを考慮しながらリュックを準備することで、緊急時に少しでも安心して行動できる環境を整えることができます。

防災リュックを用意して終わりではなく、定期的に中身を見直し最新の状態に保つことも忘れずに行いましょう。

また、あれこれと入れたくなりますが、入れすぎには注意が必要です。背負って走れるくらいの重さにとどめるようにしてください。今回紹介した「基本セット」でも約4キロあります。

これを参考に、ぜひ自分なりの防災リュックを作ってください!

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