発達障がいには様々な現れ方をするため、生きづらさを抱える人も多くいます。
発達障がいの中でも割合がかなり多いにもかかわらず、十分に理解されていない「発達障がいの特性の重複」と「特性の強弱」に主眼を置いた本があります。
今回は、本田秀夫さん著『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』を紹介します。
著者について
著者の本田秀夫さんは、精神科医であり、信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授、同附属病院子どものこころの診療部部長です。
20年にわたり発達障がいの臨床と研究に従事されておられます。
発達障がいとは
内容に入る前に、発達障がいとその特性についておさえておきましょう。
主なものは、次の3つです。
注意欠如・多動症(ADHD)
不注意、多動性、衝動性が主な特性です。
具体的には、うっかりミスが多い、忘れ物をよくする、気が散りやすい、じっと座っていられない、思い付きでしゃべる、などです。
自閉スペクトラム症(ASD)
臨機応変な対人関係が苦手で、こだわりが強いのが主な特性です。
具体的には、場の空気が読めない、独特の言葉遣いをする、人に対して一方的な関わり方をする、興味の範囲が狭い、手順やルールにこだわる、などです。
学習障がい(LD)
主な特性は、読み、書き、計算が苦手であることが挙げられます。
発達障がいの特性の重複とは?
発達障がいの特性をおさえたところで、「特性の重複」とはどういうことかを説明します。
本書では、以下のような子どものケースが紹介されています。
ゲームが大好きで、熱中すると切り替えが悪くなります。
ゲームのことで頭がいっぱいになると、友達との約束や習い事の時間など、やらなければならないことが頭から吹き飛んでしまい、遅刻をしたり約束をすっぽかしたりしてしまいます。
時には、夜遅くまでゲームで遊んでしまい、宿題ができなかったり、寝不足で授業に集中できなくなります。ルールを決めても続かず、同じ失敗を繰り返してしまいます。
一方、ゲームのプレイ中に気が散って、ゲーム機の電源が入ったまま他の遊びを始めることがあります。
「活動の切り替えが苦手」「用事を忘れてしまう」「気が散りやすい」といった特徴から、ADHDの特性があると考えることができます。
しかし、ゲームへのこだわりが強いという特徴はASDの特性とも考えることができます。
この子どもは「発達障がいのようではあるがASDともADHDとも言い切れず、どちらの特性も存在している」という状態です。
このようにいくつかの特性がまじりあっているタイプを本書では「特性の重複」と呼んでいます。著者によれば、一つの障がいの特性だけが存在し、そのための診療だけで対応できるという例は比較的少ないといいます。
さらに、重複の仕方は人によって異なり、ASDとADHDの両方の特性が強く出る人もいれば、ASDは強く、ADHDは弱いといった人もいます。このように発達障がいの特性には強弱があるのです。
本書では、この重複と強弱についてを図解していますので、「自分の場合はどうだろう」と見つめなおすことができます。
どのように生活するか
発達障がいには「特性の重複」と「特性の強弱」があることがわかりました。
自分の特性がわかったら、その特性に合わせて生活環境を整えること(環境調整)が必要であると著者は言います。
たとえば、こだわりが強い人は、良くも悪くも融通が利かないところがありますが、自分の興味があることや納得できることに関してはかなり強い集中力を発揮します。また、定められた規則を守り、初志貫徹できるという面もあります。
その強みを生かすためには、ルールを決めるときや状況が変わって方針を見直す時に、周りの人とよく相談できる環境があれば、自分の役割に邁進できることがあります。
そのような世渡り術を身につけるのが環境調整というわけです。
まとめ:生きづらさに悩む人にこそ読んでほしい
いかがだったでしょうか。
この本では、発達障がいの人の行動心理や支援の方法を紹介していますので、ぜひご覧ください。
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