よくわかる!障がい者虐待の5つの類型とは?

障がい者福祉

こんにちは!障がい者相談支援専門員しゃむ子です。

シリーズでお送りいたします「よくわかる障がい者福祉のはなし」、第2弾は障がい者虐待についてお話します。

障がい者虐待は、身体的な暴力や感情的な虐待、性的な虐待、経済的な搾取など、さまざまな形態を取ることがあります。

これらの行為は、被害者の尊厳を侵害し、人権を踏みにじるものであり、社会の中で健全な関係を築く上で許されるべきではありません。

障がい者虐待は社会の課題であり、私たち一人ひとりがその解決に向けて行動することが重要です。

障がい者虐待の類型を学んで、この問題に対する意識を高めていきましょう。

障害者虐待防止法

障がい者虐待とはどういったものかを説明するためにおさえておきたい法律があります。

それが平成24(2013)年に成立した「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援に関する法律」(以下、障害者虐待防止法)です。

障害者虐待防止法成立の背景

1990年代以降、知的障がい者が被害者となる深刻な虐待事件が相次ぎました。

一例をあげると

平成7(1995)年、茨城県の段ボール加工会社「有限会社アカス紙器」では、知的障がい者の従業員に対して角材やバットで殴る、まともな食事を与えずタバスコや腐りかけの食材を食べさせる、女性の知的障がい者を強姦する、低賃金で長時間労働をさせるといった虐待が日常的に行われていました。

また、平成16(2004)年、福岡県の障がい者支援施設「カリタスの家」において発生した事件では、殴る、蹴るといった暴行のほかに、利用者に唐辛子やお菓子の包装紙を食べさせる熱湯で入れたコーヒーを無理やり飲ませる、パニック状態になった利用者を寝具袋に詰める、といった虐待が5年間で46件確認されました。

こうした虐待事件が報道され社会的な関心を集めると、障がい者虐待を根本的に解決し被害者の権利を保護するための法的な枠組みが必要であるという認識が広まりました。

これらの背景から、日本政府は障害者虐待防止法の制定を推進し障害者虐待防止法成立に至りました。

障害者虐待防止法の目的

障害者基本法の目的にも触れておきます。

下記に示したのは、障害者虐待防止法の第1条です。

この法律は、障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み、障害者に対する虐待の禁止、障害者虐待の予防及び早期発見その他の障害者虐待の防止等に関する国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対する養護者による障害者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援」という。)のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利利益の擁護に資することを目的とする。

ポイントは次の3点です。

障がい者虐待の禁止

障がい者虐待の禁止は、障害者虐待防止法第3条にも「何人も、障害者に対し、虐待をしてはならない」と、明確に謳われています。

養護者の支援

障害者虐待防止法では、養護者の支援も重要な要素として位置づけられています。養護者とは、障がい者施設従事者や雇用主以外で、身辺の世話や身体介助、金銭の管理等を行っている家族や親族、同居人等を指します。

障害者の権利及び利益を擁護する

障がい者は人間としての権利と尊厳を持っており、差別や虐待から自由であることが保障されるべきであることから、障害者が持つ権利と利益を保護し、その権利を侵害する虐待行為の防止を目指します。

障がい者虐待の5つの類型

障がい者虐待は①身体的虐待②性的虐待③心理的虐待④放置等による虐待(ネグレクト)⑤経済的虐待の5つに分類されます。

①身体的虐待

障がい者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加える、または正当な理由なく障がい者の身体を拘束することを、身体的虐待といいます。


具体的には、たたく、殴る、蹴るといった暴行から、とても熱いものを食べさせられたり飲まされたりする、異物を食べさせる、正当な理由なく部屋に閉じ込めたり手足を拘束するといった行為も虐待にあたります。

②性的虐待

障がい者にわいせつな行為をすること、または障がい者にわいせつな行為をさせることを性的虐待といいます。

具体的には、裸の写真やビデオを撮る、不必要に身体に触る、わいせつな図画を見せる、性行為を強要するといった行為が該当します。

③心理的虐待

障がい者に対する著しい暴言や著しく拒絶的な対応、障がい者に著しい心理的外傷を与える言動を行うことを心理的虐待といいます。

具体的には脅迫する、怒鳴る、悪口を言う、拒絶的な反応を示す、人前でばかにするといった行為が該当します。

④放置等による虐待(ネグレクト)

「ネグレクト」とは、無視すること、怠ることと訳されます。

障がい者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、他の虐待行為の放置など、養護を著しく怠ることを指します。

具体的には、食事を与えない、風呂に入れてもらえない、病気なのに病院に連れて行ってもらえないなど。障がい者雇用の場では、仕事を与えないことも虐待に相当します。

⑤経済的虐待

障がい者の財産を不当に処分することや、障がい者から不当に財産上の利益を得ることを指します。

具体的には、給料や年金を勝手に抜き出す、賃金等を支払わないといった行為が該当します。

虐待を受けたとき、見つけたとき

障がい者虐待は、障害者虐待防止法第2条第2項において①養護者による障がい者虐待、②障がい者福祉施設従事者等による障がい者虐待、③使用者(雇用主など)による障がい者虐待の3つに分類されていますが、いずれの場合も、虐待を受けた、あるいは見つけた場合は市町村役場に通報しましょう。

秘密は守られますので、安心してください。

まとめ

今回は障がい者虐待について解説しました。

障がい者の自立と社会参加を促進し共生社会の実現を目指すためには、障がい者虐待の根絶は必須の課題です。

法律の制定や啓発活動に加えて、個々人が情報を共有し、関心を持つことが必要です。

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