こんにちは!障がい者相談支援専門員しゃむ子です。
シリーズでお送りいたします「よくわかる障がい者福祉のはなし」、第3弾は日常生活用具給付等事業についてお話します。
障がいを抱える方が、日常生活を円滑に送るためには福祉用具の力が必要な場合もあります。
しかし、必要な用具をそろえるとなると、気になるのはその費用です。
助成や制度があるなら利用したいですよね。
そこで今回は、日常生活用具給付等事業について解説します。
日常生活用具を利用したい、そんなときは?
はじめにおさえておいてもらいたいのは、日常生活用具給付等事業の実施主体は市町村であるということです。
そのため、どんな用具に対して助成があるのか、自己負担がいくらになるのかは市町村により異なるのです。
日常生活用具を利用したい場合は、まず市町村の障がい係に相談したりホームページを確認することになります。
どんな用具を取り扱っている?
市町村により異なるといいましたが、どんな日常生活用具をそろえなければならないかは、平成18年発出の厚生労働省告示第529号によって定められています。
それによると、用具の要件としては、
- ①障がい者等が安全かつ容易に使用できるもので、実用性が認められるもの。
- ②障がい者等の日常生活上の困難を改善し、自立を支援し、かつ、社会参加を促進すると認められるもの。
- ③用具の製作、改良または開発に当たって障がいに関する専門的な知識や技術を要するもので、日常生活品として一般に普及していないもの。
これらを満たしているものであって、次のような用具をそろえることとなっています。
- ①介護・訓練支援用具
- ②自立生活支援用具
- ③在宅療養等支援用具
- ④情報・意思疎通支援用具
- ⑤排泄管理支援用具
- ⑥居宅生活動作補助用具
詳しく見ていきましょう。
介護・訓練支援用具
介護・訓練支援用具は、障がい者等の身体介護を支援する用具、障がい児が訓練に用いるいす等のうち、障がい者等や介助者が容易に使用することができるものであって、実用性のある用具をいいます。
たとえば、特殊寝台、特殊マット、特殊尿器、入浴担架、体位変換器、移動用リフト、訓練いす、訓練用ベッドなどがあたります。
自立生活支援用具
自立生活支援用具は、障がい者等の入浴、食事、移動等の自立生活を支援する用具のうち、障がい者等が容易に使用することができるものであって、実用性のある用具をいいます。
たとえば、入浴補助用具、便器、頭部保護帽、杖、移動・移乗支援用具、特殊便器、火災警報器、自動消火器、電磁調理器、聴覚障がい者用屋内信号装置などがあたりあます。
在宅療養等支援用具
在宅療養等支援用具は、障がい者等の在宅療養を支援する用具のうち、障がい者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるものをいいます。
たとえば、透析液加温器、ネブライザー(吸入器)、電気式たん吸入器、酸素ボンベ運搬車、盲人用体温計などがあたります。
情報・意思疎通支援用具
情報・意思疎通支援用具は、障がい者等の情報収集、情報伝達、意思疎通等を支援する用具のうち、障がい者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるものをいいます。
たとえば、携帯用会話補助装置、情報・通信支援用具、点字ディスプレイ、点字器、視覚障がい者用ポータブルレコーダー、視覚障がい者用活字文書読み上げ装置、盲人用時計、聴覚障がい者用通信装置、人工咽頭などがあたります。
排泄管理支援用具
排泄管理支援用具は、障がい者等の排泄管理を支援する用具および衛生用品のうち、障がい者等が容易に使用することができるものであって、実用性のあるものをいいます。
たとえば、ストマ用装具(蓄便袋、蓄尿袋)、紙おむつなどがあたります。
居宅生活動作補助用具
居宅生活動作補助用具は、障がい者等の居宅生活動作等を円滑にする用具であって、設置に小規模な住宅改修を伴うものをいいます。
たとえば、手すりの取り付けや段差の解消、便器の取り替えなどがあたります。
日常生活用具の注意点
日常生活用具の注意点としては、すべての用具には対象の障がいの程度などが設定されていますので事前に確認しましょう。
たとえば、「特殊寝台は身体障がい者のうち下肢または体幹機能障がい2級以上に該当する方が対象」という感じです。
自己負担額
先に書いた通り、自己負担がいくらになるのかは市町村により異なるので、必ず確認しましょう。
多くの場合は、購入金額の1割負担で、所得によって月額負担額の上限を設けているパターンです。
生活保護、住民税非課税世帯は月額上限0円、課税世帯は月額上限37,200円といった感じです。
なお、各用具には基準額が定められており、これを超えた場合は、超えた分だけ自己負担が生じます。
少しわかりにくいので、例をあげてみます。
住民税非課税世帯の方が、電気式たん吸引器(基準額:51,500円)を60,000円で購入するとします。
この場合、
- ①1割負担が生じますが、住民税非課税世帯の月額上限額は0円です。
- ②基準額を超えた分(8,500円)は自己負担となります。
- ③よって、この方の自己負担額は、総額8,500円となります。
これが課税世帯の場合は、
- ①基準額の1割(5,150円)が自己負担額となります(月額上限以内)。
- ②基準額を超えた分(8,500円)は自己負担となります。
- ③自己負担額は、1割分と基準額を超えた分の総額13,650円となります。
日常生活用具の給付を受けるには
日常生活用具の品目や自己負担を確認したら、市町村役場の障がい担当課に申請書を提出します。
必ず、購入する前に申請しましょう。
申請書を提出したら市町村が業者へ発注しますので、あとは受領を待つだけです。
障害者総合支援法
ここで少しだけ法律に触れておきます。
日常生活用具給付等事業の根拠法令は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)という法律です。
この法律の目的も見てみましょう。
・・・障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
日常生活用具給付等事業は、法律上では「地域生活支援事業」という位置づけになっています。
また、厚生労働省通知(障発第0801002号)において市町村の必須事業となっています。つまり、各市町村において必ず実施しなければならない事業なのです。
まとめ
今回は日常生活用具給付等事業を解説しました。
何度もお伝えしますが、この事業は市町村の事業となるため、どんな用具があるか、自己負担はどうなっているのかを必ず確認してくださいね。
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